カンヌ映画祭で特別賞受賞!まもなく公開の「PLAN75」について

カンヌ映画祭で特別賞受賞!まもなく公開の「PLAN75」について

パンデミックも落ち着き、いつも通りの華やかさを取り戻した、2022年の第75回カンヌ国際映画祭。革新的な作品に贈られる“ある視点”部門にて、早川千絵監督の長編映画『PLAN75』がカメラ・ドール特別賞を受賞して話題となりました!今回は、2022年6月17日(金)から日本で劇場公開される話題のカンヌ映画『PLAN75』を紹介します。

目次

『PLAN75』について

作品概要

『PLAN75』は、2018年に是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の中の一遍を早川千絵監督が再構築し、キャストを一新、脚本に手を加えて長編映画として制作された作品です。75歳以上のお年寄りが自らの意思で生死を選べる世界を描き、高齢化社会の問題に鋭く斬りこんだセンセーショナルな内容がカンヌ国際映画祭で高く評価され、カメラ・ドール特別賞を受賞しました。

カンヌ国際映画祭「カメラ・ドール特別賞」とは

カンヌ映画祭は、ショーレース的な意味合いのある「コンペティション部門」と革新的で独創的な作品を発掘する「“ある視点”部門」に分かれています。今回受賞したカメラ・ドール特別賞は、“ある視点”部門において優れた作品を制作した新人監督に与えられる名誉ある賞です。日本人では1997年に河瀨直美監督が『萌の朱雀』でカメラ・ドール新人監督賞を受賞して以来の快挙となります。

スタッフ・キャスト

監督・脚本

早川千絵

出演

倍賞千恵子/磯村勇人/河合優実/ステファニー・アリアン/たかお鷹/大方斐紗子/串田和美

あらすじ

少子高齢化社会の解決策として、75歳から自らの生死を決めることができる制度「PLAN75」が国会で可決され、施行されている近未来の日本。夫と死別し、ホテルの清掃員として働きながら慎ましい生活を送る78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、高齢を理由に突然仕事を解雇されてしまう。住む場所を追われて行き場が無くなりそうなミチは「PLAN75」の申請を考えるように・・・。一方、市役所の「PLAN75」案内係・ヒロム(磯村勇人)や、死を選択した高齢者に寄り添いサポートするコールセンタースタッフの璃子(河合優実)、フィリピンから娘の手術費を稼ぐため関連施設に出稼ぎに来ている介護スタッフのマリア(ステファニー・アリアン)は、尊厳死を推奨するかのような選択制度に疑問を抱くようになり葛藤する。

見どころ:俳優たちの熱演

命の選択を迫られる主人公ミチを演じるのは、『男はつらいよ』シリーズで寅さんの妹として可憐な姿を国民に印象づけた倍賞千恵子さん。顔に深く刻まれた皺や、体を酷使して働く悲壮感が漂う姿を体当たりで演じます。脚本を読み、「酷い話だと思ったけど、物語の終盤でミチがとある選択する姿にものすごく心打たれて、それだけで出演することを決めました。」と振り返りました。凛とて美しい佇まい、倍賞さんの存在感がこの映画の魅力のひとつとなっています。

また、「PLAN75」を案内する市役所の職員を、若手実力派俳優の磯村勇人さんが演じます。何気ないやり取りの中でわずかに揺れる心の動きを、倍賞さん相手に目で表現する巧みな演技は見る人の心を揺さぶります。爽やかなイケメンから、ドスのきいたチンピラまでふり幅の大きさにも動じることなく、役を自分のものにする確かな演技力は、この映画でも見事に発揮されています。

現地での反応

カンヌ映画祭の受賞作は、その年の審査委員たちの好みが色濃く反映されるのが特徴です。今年の審査委員長ロッシ・デ・パルマ氏は、近年の社会問題を取り扱った作品が好みということもあり、高齢化社会という問題定義を取り扱ったこの作品に魅了されたのではないでしょうか。年齢で命を線引きし、死の選択を迫られるという衝撃的な内容は観客たちの心にも大きく響き、場内は5分以上のスタンディングオベーションで作品の素晴らしさを讃え、感極まった観客が監督にハグする姿も見られました。社会的弱者に対する世間の風当たりの強さに憤りを感じていた早川監督は「人が生きることを全肯定したかった。人の心を動かせるような映画をこれからも作っていきたい。」と頼もしい抱負を語りました。

まとめ

今回はカンヌ映画祭の受賞作品として注目される映画『PLAN75』について紹介しました。生死を扱う深いテーマとなる作品となりますが、少子高齢化社会が進む日本にとって胸に迫るものがあるでしょう。作品を鑑賞した後に、この先の人生についてじっくり考えてみるのも悪くないのではないでしょうか。

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